2026年8月13日、千葉県では線状降水帯による記録的な大雨が発生し、千葉市、市川市、船橋市、柏市などの広い範囲で道路冠水や住宅地への浸水が相次ぎました。

「川から離れているのになぜ冠水したのか」「ハザードマップで色が付いていなければ安全なのか」「これから土地を購入する場合、何を確認すればよいのか」と不安を感じた方も多いのではないでしょうか。

今回の冠水は、単純に排水溝が詰まったから起きたものではありません。

短時間に集中した猛烈な雨、下水道や排水施設の処理能力、河川水位の上昇、土地の高低差、千葉県内に広がる低地などが重なった可能性があります。

この記事では、2026年8月13日の千葉県における大雨の確認済み情報をもとに、冠水が発生した理由、冠水地域が増えているように見える背景、水害に強い土地の選び方、注文住宅で実施したい浸水対策を詳しく解説します。

なお、本記事は2026年8月14日時点の公表情報をもとにしています。個別地点の冠水原因や被害状況については、今後の自治体や関係機関による調査で変更される可能性があります。

この記事の結論

今回の千葉県の冠水を踏まえ、家づくりで重要なポイントは次のとおりです。

  • 2026年8月13日は線状降水帯により短時間に記録的な雨が集中した
  • 雨量が排水能力を上回った内水氾濫と、河川水位上昇による排水困難が重なった可能性がある
  • 千葉県北西部には平坦な低地や過去の地盤沈下によるゼロメートル地帯が存在する
  • 洪水ハザードマップだけではなく、内水、高潮、津波、地形分類、過去の浸水履歴まで確認する
  • 土地の海抜だけではなく、前面道路や周辺宅地との相対的な高さを現地で確認する
  • 浸水リスクがある土地では、盛土、高基礎、床高、防水ライン、設備の高所配置を組み合わせる
  • ハザードマップに色が付いていないことは、水害が起こらない保証ではない
  • 建物だけで完全に水を防ぐことは難しく、最も効果が大きい対策は土地選びである

冠水しにくい家を建てるには、住宅会社の構造や商品だけを比較するのではなく、土地と建物を一体で検討する必要があります。

1.2026年8月13日に千葉県で何が起きたのか

1-1.千葉県の14市にレベル5大雨特別警報

気象庁は2026年8月13日、千葉県の次の14市にレベル5大雨特別警報を発表しました。

  • 千葉市
  • 市川市
  • 船橋市
  • 松戸市
  • 佐倉市
  • 習志野市
  • 柏市
  • 市原市
  • 八千代市
  • 我孫子市
  • 谷市
  • 四街道市
  • 印西市
  • 白井市

気象庁は「これまでに経験したことのないような大雨」として、浸水想定区域などでは災害がすでに発生している可能性が極めて高いと発表しました。

千葉県北西部や南部では線状降水帯が発生し、その後も県内の複数地域で強い雨が繰り返されました。

気象庁の2026年8月13日発表

1-2.千葉市では3時間に187ミリを観測

8月13日1930分時点の気象庁資料では、次の雨量が報告されています。

観測地点3時間降水量6時間降水量
千葉市187.0ミリ204.0ミリ
佐倉市158.5ミリ162.0ミリ
船橋市121.5ミリ162.5ミリ
我孫子市93.5ミリ170.5ミリ

さらに、市原市付近では1時間に100ミリ、千葉市付近では1時間に110ミリの雨が降ったとみられ、記録的短時間大雨情報が発表されました。

短時間に100ミリ前後の雨が降ると、道路側溝、雨水管、下水道、ポンプ場などが正常に機能していたとしても、雨水を処理しきれない場合があります。

1-3.道路冠水は千葉県の広い範囲で発生

船橋市は8月13日、市内で多数の道路冠水が発生し、収集車が通行できない場所が多くなったとして、ごみ収集を中止しました。

千葉駅、市川駅、柏駅周辺などでも道路が広範囲に冠水し、鉄道の運休や停電、帰宅困難者の発生など、生活インフラに大きな影響が出ました。

千葉県は8月14日、県内24市町に災害救助法を適用しています。

今回の大雨は、一部の川沿いや山間部だけではなく、市街地、駅周辺、住宅地を含む広範囲で浸水リスクが高まった点が特徴です。

2.千葉県で道路や住宅地が冠水した5つの理由

今回の個別地点における正式な冠水原因は、今後の調査を待つ必要があります。

ただし、気象庁や自治体の情報から、少なくとも次の要因が重なった可能性があります。

2-1.線状降水帯による雨量が排水能力を上回った

線状降水帯では、発達した積乱雲が次々に発生し、ほぼ同じ地域を通過します。

通常の雨であれば、道路に降った雨は側溝や集水ますから雨水管に入り、河川や海へ排水されます。しかし、短時間に大量の雨が集中すると、排水管へ流れ込む水量が処理能力を超えます。

その結果、次のような現象が発生します。

  1. 道路に降った雨を集水ますが処理できなくなる
  2. 雨水管や下水管の水位が上昇する
  3. 低い道路や交差点に水が集まる
  4. マンホールや側溝から水があふれる
  5. 道路から住宅地や建物内へ水が流れ込む

これが内水氾濫の基本的な仕組みです。

2-2.河川水位が上がり、雨水を排出しにくくなった

8月13日1930分時点で、次の河川などが氾濫危険水位を超えていました。

  • 松戸市の坂川
  • 松戸市の新坂川
  • 市川市の国分川
  • 柏市の手賀沼
  • 船橋市の海老川
  • 千葉市の葭川

河川の水位が高くなると、市街地に降った雨を河川へ排出しにくくなります。

排水先となる河川の水位が上がっているため、雨水管に水が滞留したり、排水ポンプの能力を超えたりするからです。

そのため、川が堤防を越えていなくても、市街地側で内水氾濫が発生することがあります。

浸水の種類主な原因特徴
外水氾濫河川の越水、堤防決壊広範囲かつ深く浸水する可能性がある
内水氾濫排水能力を超える雨、河川への排水困難駅前、道路、住宅地などでも発生する
高潮浸水台風や低気圧による海面上昇沿岸部や河口部で発生しやすい
地表面流地面に浸透しない雨が低い場所へ流れる坂の下、交差点、掘り込み道路に集中しやすい

今回の道路冠水をすべて「川の氾濫」と説明するのは正確ではありません。河川水位の上昇と内水排除の難しさを分けて考える必要があります。

2-3.市街地では雨水が地中へ浸透しにくい

住宅、店舗、駐車場、道路などが増えると、地表が屋根やアスファルト、コンクリートで覆われます。

森林や畑であれば地中へ浸透していた雨も、市街地では短時間に側溝や水路へ流れ込みます。

特に次のような場所では、雨水が集中しやすくなります。

  • 大規模な舗装駐車場の周辺
  • 駅前の密集市街地
  • 坂道の下にある交差点
  • アンダーパス
  • 周囲より低い住宅地
  • 排水先が限定されている造成地
  • 暗渠化された旧水路の周辺

都市化だけが今回の冠水原因と確定したわけではありませんが、雨水の流出速度と集中量を増やす要因になります。

2-4.千葉県北西部には平坦な低地がある

千葉県内でも、水害リスクは地域によって大きく異なります。

県の資料では、浦安市、市川市、船橋市などの葛南地区は地形的に平坦で、過去の地盤沈下によるゼロメートル地帯が分布しているとされています。

土地が平坦で排水先との高低差が小さい地域では、自然流下だけで雨水を排出することが難しく、排水機場やポンプへの依存度が高くなります。

また、千葉県には次のような水がたまりやすい地形も存在します。

  • 河川沿いの氾濫平野
  • 後背低地
  • 谷底平野
  • 旧河道
  • 干拓地
  • 海岸平野
  • 埋立地
  • 台地に入り込んだ谷津地形

千葉県全体が低いわけではありません。下総台地や房総丘陵など比較的標高のある場所もありますが、台地の間を通る谷や坂の下では、局地的な内水氾濫が起こる可能性があります。

2-5.排水口の詰まりだけを原因にしてはいけない

道路の集水ますや側溝に落ち葉、ごみ、土砂がたまると、排水能力が低下することがあります。

ただし、今回のような記録的な大雨について、排水口の詰まりだけで広域冠水を説明することはできません。

正常な状態の排水施設であっても、設計上想定した雨量を大幅に超えれば処理できないからです。

冠水の原因を検証するには、次の情報を確認する必要があります。

  • 実際の時間雨量
  • 雨水管の処理能力
  • 排水ポンプの運転状況
  • 河川や水路の水位
  • 土地の高低差
  • 集水ますや側溝の状態
  • 過去の浸水履歴
  • 周辺開発による雨水流出量の変化

現地調査を行わず、映像だけを見て施工不良や行政の管理不足と断定するのは避けるべきです。

3.本当に冠水地域は増えているのか

3-1.強度の高い雨は2倍に増加

「昔より冠水する地域が増えた」と感じる背景には、雨の降り方の変化があります。

気象庁によると、1時間降水量80ミリ以上、3時間降水量150ミリ以上、日降水量300ミリ以上といった強度の高い雨は、1980年頃と比較して、おおむね2倍程度に発生頻度が増加しています。

気象庁による極端な大雨の長期変化短時間強雨が増えれば、これまで冠水しなかった場所でも排水能力を超える可能性が高くなります。

3-2.指定された冠水地域が単純に増えたわけではない

注意したいのは、「冠水する地域の面積が全国で一律に増加した」と単純化できるわけではないことです。

近年は次の変化もあります。

  • 内水浸水想定区域図の作成対象が拡大した
  • 想定最大規模降雨によるハザード情報が整備された
  • 冠水映像がSNSで瞬時に共有されるようになった
  • 過去には把握されなかった小規模冠水も記録されるようになった
  • 宅地開発により被害を受ける住宅や施設が増えた地域がある

つまり、実際の豪雨リスクが高まっていることに加え、可視化されるリスク情報も増えています。

3-3.過去に冠水していない土地も安全とは限らない

「30年間住んでいるが一度も浸水していない」という情報は参考になりますが、将来の安全を保証するものではありません。

過去に冠水していなくても、次のような変化が起こる可能性があります。

  • 過去最大を超える短時間強雨が発生する
  • 周辺の宅地開発で雨水流出量が増える
  • 河川水位が高い時間と豪雨が重なる
  • 排水施設やポンプが停電・故障する
  • 上流側の土地利用が変化する
  • 地盤沈下や道路工事で微妙な高低差が変わる

土地選びでは、過去の実績と将来の想定を両方確認することが重要です。

4.冠水しにくい土地を選ぶ8つの確認方法

4-1.洪水だけでなく内水ハザードマップを確認する

土地を探すときは、国土地理院の重ねるハザードマップと、市区町村が公開するハザードマップの両方を確認します。

最低限、次の災害情報を重ねてください。

  • 洪水
  • 内水
  • 高潮
  • 津波
  • 土砂災害
  • 地形分類
  • 指定緊急避難場所

洪水ハザードマップは、主に河川の氾濫を想定しています。一方、内水ハザードマップは、下水道や排水施設の能力を超えた雨による浸水を想定しています。

川から離れた市街地の土地を検討する場合も、内水情報の確認が必要です。

国土地理院の重ねるハザードマップ

4-2.色の有無だけでなく浸水深と継続時間を見る

ハザードマップでは、単に色が付いているかを見るだけでは不十分です。

次の項目を確認してください。

  • 想定される浸水深
  • 浸水が継続する時間
  • 家屋倒壊等氾濫想定区域か
  • 想定に使用した降雨条件
  • 対象となっている河川
  • 内水浸水想定が反映されているか

同じ浸水想定区域でも、想定浸水深が床下程度なのか、1階全体なのか、2階以上に達するのかによって、取るべき対策は異なります。

浸水深50センチ未満でも、道路と宅地の高さや床の位置によっては床上浸水する可能性があります。

4-3.ハザードマップの空白を安全と判断しない

ハザードマップで色が付いていない土地でも、次の可能性があります。

  • 対象河川の浸水想定が未整備
  • 内水浸水想定区域図が未作成
  • 小規模な水路や側溝が反映されていない
  • 局地的な高低差が地図に表現されていない
  • 作成時の想定を超える雨が降る
  • 新しい開発や道路工事が反映されていない

国土地理院も、浸水想定区域図は作成途上であり、現時点でリスク情報が表示されていなくても状況が変わる可能性があると案内しています。

そのため、ハザードマップは「色がなければ安全」という証明書ではなく、確認すべき資料の一つとして使います。

4-4.土地条件図で昔の地形を調べる

国土地理院の土地条件図では、その土地がどのように形成されたかを確認できます。

特に注意したい地形は次のとおりです。

地形水害に関する特徴
旧河道過去の川の流路で、水が集まりやすく長時間滞留する場合がある
後背低地自然堤防の背後にある低地で、排水されにくい場合がある
谷底平野周辺の斜面や台地から雨水が流れ込みやすい
氾濫平野河川の氾濫によって形成された低地
海岸平野・三角州標高が低く、洪水や内水、高潮を確認したい
干拓地周辺水位より低い場合があり、排水設備への依存度が高い
盛土地・埋立地水害に加えて液状化や地盤条件も確認したい
自然堤防周辺低地より高い傾向があるが、必ず安全とは限らない

国土地理院の土地条件図地名に「沼」「池」「川」「谷」「田」などが含まれている場合は参考になりますが、地名だけで危険性を断定してはいけません。現在の標高、造成状況、排水施設まで確認してください。

4-5.海抜より前面道路との高低差を見る

土地の海抜が高くても、周囲より低ければ雨水が集まります。

現地では次の高さを比較してください。

  • 宅地と前面道路
  • 宅地と隣接地
  • 玄関予定位置と道路
  • 駐車場と道路
  • 道路の側溝と宅地
  • 近くの交差点やアンダーパス
  • 擁壁の上と
  • 周辺河川や水路

特に、道路から敷地へ下る形の土地、周囲を擁壁や高い宅地に囲まれた土地、坂道の一番下にある土地は注意が必要です。

不動産広告の海抜だけではなく、測量図や現地測量で相対的な高さを確認しましょう。

4-6.過去の浸水実績を自治体に確認する

売主や仲介会社だけでなく、市区町村の河川、下水道、防災、道路管理を担当する部署にも確認します。

質問したい項目は次のとおりです。

  • 過去に道路冠水や床上・床下浸水が発生したか
  • 浸水実績図を公開しているか
  • 内水ハザードマップがあるか
  • 近くの水路や雨水管の排水先はどこか
  • 雨水管の計画降雨はどの程度か
  • 排水ポンプ場の対象区域か
  • 冠水対策や河川改修の計画があるか
  • 過去に通行止めになった道路はあるか

過去の浸水履歴がある場合は、「対策工事をしたから大丈夫」という説明だけで判断せず、工事内容と対策後の想定雨量まで確認してください。

4-7.雨の日に現地を確認する

可能であれば、強い雨が降った日や雨の翌日に現地を確認します。

晴れた日には分からない次の問題が見つかることがあります。

  • 道路に水たまりが残っている
  • 側溝の水位が高い
  • 敷地へ周辺の雨水が流れ込んでいる
  • 擁壁から水が染み出している
  • 水路の流れが遅い
  • 泥や落ち葉が一方向に集まっている
  • 近隣住宅に止水板や土のうが常備されている
  • 基礎や外壁に過去の浸水跡がある

大雨や冠水時に現地へ近づくことは危険です。確認は雨が弱まって安全が確保された後に行ってください。

4-8.避難経路まで含めて土地を評価する

自宅が浸水しなくても、周辺道路が冠水すれば孤立する可能性があります。

次の経路を実際に確認しましょう。

  • 自宅から避難所
  • 自宅から高台
  • 自宅から幹線道路
  • 駅から自宅
  • 保育園や学校から自宅
  • 職場から自宅
  • 医療機関への経路

アンダーパス、河川沿い、崖沿い、低い交差点を通らなければ避難できない土地は、自宅単体のハザードが低くても慎重な判断が必要です。

5.土地購入前に使える水害リスクチェックリスト

  • 洪水ハザードマップを確認した
  • 内水ハザードマップを確認した
  • 高潮・津波・土砂災害も重ねて確認した
  • 想定浸水深と浸水継続時間を確認した
  • 土地条件図で旧河道や後背低地ではないか確認した
  • 古い地図や航空写真で以前の土地利用を確認した
  • 土地と前面道路の高低差を確認した
  • 周辺宅地や坂道から雨水が流れ込まないか確認した
  • 自治体へ過去の浸水実績を確認した
  • 雨水管、水路、排水ポンプの情報を確認した
  • 冠水しやすい道路やアンダーパスを確認した
  • 複数の避難経路を確認した
  • 近隣住民へ過去の道路冠水について聞いた
  • 水災補償を含む火災保険料を確認した
  • 浸水対策に必要な追加工事費を資金計画へ入れた

一つでも不明な項目がある場合は、土地契約前に確認することが大切です。

水害ハザードマップ上の所在地は不動産取引における重要事項説明の対象ですが、説明を受けるだけでなく、買主自身が浸水深や周辺地形まで確認しましょう。

6.冠水しにくい家を建てる9つの方法

6-1.最優先は水が集まりにくい土地を選ぶこと

浸水対策で最も効果が大きいのは、建物の仕様ではなく立地です。

想定浸水深が大きい土地で、玄関に止水板を設置しただけでは十分な対策になりません。水は玄関以外にも、窓、換気口、配管貫通部、排水管、床下などから侵入する可能性があります。

土地を変更できる段階であれば、次の条件を優先してください。

  • 周囲より相対的に高い
  • 洪水と内水の両方でリスクが低い
  • 過去の浸水履歴がない
  • 旧河道や後背低地ではない
  • 排水経路が明確
  • 安全な避難経路を複数確保できる

6-2.盛土や地盤面のかさ上げを検討する

敷地全体または建物部分をかさ上げし、周辺道路より高くすることで浸水リスクを減らせる場合があります。

ただし、安易な盛土には次の注意点があります。

  • 隣地へ雨水を流さない排水計画が必要
  • 盛土による不同沈下を防ぐ必要がある
  • 擁壁の構造安全性を確認する
  • 地盤改良費が増える場合がある
  • 自治体の条例や盛土規制を確認する
  • 駐車場の勾配が急になる可能性がある
  • 道路との接続や外構計画に影響する

土地だけを高くすればよいのではなく、地盤、擁壁、排水、建物基礎を一体で設計しなければなりません。

6-3.基礎と1階床を高くする

高基礎や床高の設定により、一定の浸水深までは床上浸水を防げる可能性があります。

設計時には次の高さを明確にします。

  1. 前面道路の高さ
  2. 計画地盤面の高さ
  3. 基礎天端の高さ
  4. 1階床の高さ
  5. 玄関土間の高さ
  6. 想定浸水深
  7. 設計上確保する余裕高

「通常より基礎を10センチ高くする」といった決め方ではなく、ハザードマップの想定浸水深と現地測量をもとに設計することが重要です。

想定浸水深が1階を超える土地では、高基礎だけで対応することは難しく、土地の再検討やピロティ、高床化、2階居住など別の考え方が必要です。

6-4.建物の水防ラインを設定する

水防ラインとは、建物内へ水を入れないために、連続して浸水を防ぐ境界です。

次の部分を一体的に検討します。

  • 玄関ドア
  • 勝手口
  • 掃き出し
  • ビルトインガレージ
  • 基礎換気口
  • 給排水管の貫通部
  • エアコン配管
  • 床下点検口
  • 地下収納
  • 排水口
  • 外構の門扉や

玄関に止水板を設置しても、低い位置の換気口やガレージから水が入れば、水防ラインは成立しません。

止水板は有効な対策の一つですが、止水板だけで建物全体を防水できるわけではありません。

6-5.下水の逆流を防止する

豪雨時には、下水道や雨水管の水位が上がり、トイレ、浴室、洗濯機排水、屋外ますなどから水が逆流する場合があります。

設計者や設備業者に、次の対策が可能か確認してください。

  • 排水管への逆流防止弁
  • 汚水ますや雨水ますの密閉
  • 低い位置にある排水口の見直し
  • 浸水時に使用を止める設備の明確化
  • 室内への逆流を想定した止水方法

逆流防止弁は維持管理が必要であり、すべての配管へ一律に設置すればよいわけではありません。排水系統と自治体の下水道方式に合わせた設計が必要です。

6-6.電気設備と給湯設備を高い位置へ設置する

浸水後に住宅へ住めなくなる大きな原因の一つが、電気・給湯・空調設備の故障です。

次の設備は想定浸水深より高い位置への設置を検討します。

  • 分電盤
  • 太陽光発電のパワーコンディショナー
  • 蓄電池
  • エアコンの室外機
  • エコキュートの制御部分
  • 給湯器
  • 床暖房や全館空調の機械
  • 通信設備
  • 防犯設備
  • 屋外コンセント

国土交通省のガイドラインでも、電気設備を上階へ設置することや、開口部の高所化、下水道からの逆流防止が示されています。

国土交通省の電気設備浸水対策

全館空調や床下空調を採用する場合は、床下浸水時の機械故障、ダクト内への汚水流入、復旧方法まで確認しましょう。

6-7.地下室や掘り込みガレージを避ける

水害リスクがある土地では、地下室、半地下、ドライエリア、掘り込みガレージは慎重に検討する必要があります。

地表から流れ込んだ水が短時間に集中しやすく、排水ポンプが停電や能力超過で停止すると、大きな被害につながるためです。

また、一般的なガレージシャッターは止水設備ではありません。

ビルトインガレージを採用する場合は、ガレージ部分から居住部分への浸水経路と、車を事前に移動させる場所まで決めておきましょう。

6-8.雨水貯留と浸透設備を取り入れる

敷地内に降った雨を一時的にためたり、地中へ浸透させたりすることで、道路や下水道へ流れ出す雨水を減らせます。

代表的な設備は次のとおりです。

  • 雨水貯留タンク
  • 雨水浸透ます
  • 浸透トレンチ
  • 透水性舗装
  • 植栽帯
  • 雨庭
  • 敷地内貯留

ただし、粘土質地盤、地下水位が高い土地、擁壁付近、斜面地などでは、雨水浸透設備が適さない場合があります。

地盤調査と自治体の基準を確認し、排水計画の専門家に判断してもらいましょう。

6-9.2階へ避難できる間取りにする

建物への浸水を完全に防げない状況も想定し、垂直避難できる間取りを考えます。

  • 2階に寝室や一時避難スペースを設ける
  • 2階に飲料水や非常食を保管する
  • モバイルバッテリーや携帯トイレを保管する
  • 屋根やバルコニーへの避難経路を検討する
  • 高齢者や乳幼児が移動できる動線を確保する
  • 1階に重要書類や高価な家電を集中させない

ただし、想定浸水深が2階まで達する地域や家屋倒壊等氾濫想定区域では、建物内の垂直避難だけに頼ることはできません。安全な段階で区域外へ避難する計画が必要です。

7.浸水対策は想定浸水深に合わせて選ぶ

土地の状況優先して検討する対策
ハザード情報がなく周囲より高い排水勾配、雨水貯留、避難経路の確認
内水リスクがある宅地・床高の確保、止水板、逆流防止、設備の高所配置
浅い浸水が想定される盛土、高基礎、水防ライン、耐水性のある仕上げ
1階床を超える浸水が想定される土地の再検討、高床化、2階居住、垂直避難計画
長時間浸水が想定される土地の再検討、設備・備蓄の上階配置、早期避難
家屋倒壊等氾濫想定区域原則として立地を慎重に再検討し、区域外避難を計画
高潮や津波も重なる洪水対策だけで判断せず、避難距離と避難施設を確認

重要なのは、対策商品を先に選ぶのではなく、想定される水の高さ、流速、継続時間を先に設定することです。

8.住宅会社へ確認したい水害対策の質問

土地と住宅会社を比較する際は、次の質問をしてください。

  1. この土地で想定される洪水・内水・高潮の浸水深を確認していますか
  2. 前面道路と1階床の高さはセンチ違いますか
  3. 計画地盤面は周辺宅地より高いですか
  4. 周辺から敷地へ流れ込む雨水をどのように処理しますか
  5. 盛土や高基礎を採用した場合、不同沈下への対策はありますか
  6. 玄関以外の浸水経路を確認していますか
  7. 基礎換気口や配管貫通部の高さはどうなりますか
  8. 下水道からの逆流防止対策は可能ですか
  9. 分電盤や蓄電池、室外機は浸水想定より高くできますか
  10. 床下浸水した場合に断熱材や空調設備を交換できますか
  11. 外壁内部へ水が入った場合の乾燥方法はありますか
  12. 雨水貯留槽や浸透ますを設置できますか
  13. 停電時でも排水や給水を維持できますか
  14. 水害後の点検や復旧に対応できますか
  15. 水害対策の追加費用はいくらですか

「基礎が高いから安心」「止水板を付けるから大丈夫」といった説明だけではなく、想定浸水深に対してどこまで被害を防げるのかを図面と数値で確認しましょう。

9.浸水後にカビや腐朽を防ぐための設計も必要

木造住宅では、床下や壁の内部へ水が入った後の乾燥が遅れると、カビ、腐朽、断熱材の性能低下につながります。

浸水リスクがある土地では、浸水を防ぐ対策だけでなく、浸水後に点検・交換しやすい設計も重要です。

  • 床下へ入りやすい点検口を設ける
  • 濡れた断熱材を交換できる構成にする
  • 壁内や床下を乾燥させる方法を事前に決める
  • 吸水しやすい仕上げ材の使用範囲を検討する
  • 配管や電気設備の点検性を確保する
  • 住宅会社の水害後対応を確認する
  • 浸水後は通電前に電気設備を点検する

水が引いた直後に見た目が乾いていても、壁内、床下、断熱材には水分が残っている可能性があります。

自己判断で通電したり、表面だけを清掃して壁を閉じたりせず、住宅会社、電気工事会社、専門業者へ相談してください。

10.火災保険の水災補償も確認する

建物の対策を行っても、想定を超える水害を完全に防ぐことはできません。

土地購入前に火災保険の水災補償についても確認しましょう。

確認したい項目は次のとおりです。

  • 洪水による浸水が補償されるか
  • 内水氾濫による浸水が補償されるか
  • 土砂災害が補償されるか
  • 建物と家財の両方が対象か
  • 支払条件となる浸水深や損害割合
  • 免責金額
  • 給湯器、室外機、蓄電池など屋外設備の扱い
  • 水害後の片付けや仮住まい費用
  • ハザード区分による保険料

水災補償の条件は保険会社や商品によって異なります。

ハザードマップで色が付いていないという理由だけで補償を外さず、内水氾濫、周辺道路、過去の浸水実績も含めて判断してください。

11.大雨時にやってはいけない行動

今回の千葉県の冠水では、車両が冠水道路で動けなくなる事例も発生しました。

大雨時は次の行動を避けてください。

  • 冠水した道路へ車で進入する
  • 水深を確認するため徒歩で入る
  • アンダーパスへ進入する
  • 川や水路、側溝を見に行く
  • 避難指示後に家財や車を移動する
  • 浸水後すぐにブレーカーを入れる
  • 水が引いた直後に川へ近づく
  • 夜間に無理をして遠い避難所へ移動する

冠水した道路は、水深や路面の位置が分からず、側溝やマンホールへ転落する危険があります。

レベル5を待ってから避難するのではなく、ハザードマップと気象庁のキキクル、自治体の避難情報を確認し、警戒レベル4までに危険な場所から避難することが原則です。

まとめ

2026年8月13日に千葉県各地で発生した冠水は、線状降水帯による記録的な短時間強雨が大きな要因です。

雨量が道路側溝や下水道の排水能力を上回ったことに加え、河川水位の上昇によって市街地の雨水を排出しにくくなり、低い道路や住宅地へ水が集中した可能性があります。

千葉県には、台地だけでなく、旧河道、後背低地、谷底平野、海岸平野、過去の地盤沈下による低地など、多様な地形があります。同じ市内でも、水害リスクは土地ごとに異なります。

これから注文住宅を建てる方は、次の順番で検討してください。

  1. 洪水、内水、高潮、津波、土砂災害を確認する
  2. 土地条件図と過去の浸水実績を確認する
  3. 前面道路や周辺宅地との高低差を測る
  4. 安全な避難経路を確認する
  5. 想定浸水深に合わせて床高や設備位置を決める
  6. 水防ラインと排水の逆流防止を設計する
  7. 火災保険の水災補償を確認する

冠水しにくい家づくりでは、建物の性能だけを高めても十分ではありません。

土地選びの段階で水害リスクを避け、残ったリスクを建物設計と避難計画、保険で補うことが重要です。

この記事の監修

マイホームヒーローズ代表 潟沼勇気
宅地建物取引士・FP2級・住宅ローンアドバイザー

出典・引用元

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