新築住宅の床下に広がった黒いカビ、入居から2年で確認された24時間換気設備の黒い斑点、10年目に初めて現れた壁のカビ。

X(旧Twitter)やInstagram、YouTubeでは、アイ工務店や一条工務店の住宅におけるカビ・結露の投稿が大きな注目を集めています。

ただし、SNSに投稿された写真だけで、カビの種類や発生原因、施工上の責任を確定することはできません。また、床下のカビ、換気設備内部の結露、壁体内結露は、それぞれ発生場所も原因も異なります。

そこで本記事では、数万回以上表示されたSNS投稿を入口にしながら、日経クロステックに掲載された住宅検査事例、国土交通省国土技術政策総合研究所の資料、壁体の実験結果を組み合わせて検証します。

この記事の結論

住宅のカビ・結露対策で重要なのは、断熱材の厚さやUA値だけではありません。

  • 建築中に濡れた木材や合板を乾燥させてから塞ぐ
  • 室内側の防湿・気密層を切れ目なく施工する
  • 外側に通気・排湿・排水できる経路をつくる
  • 屋根・小屋裏・床下・壁内の通気経路を塞がない
  • 24時間換気設備の風量、結露、排水、点検性を確認する
  • C値だけでなく、漏気している場所まで確認する
  • カビが発生した場合は表面処理で済ませず、発生源を特定する

高断熱住宅でも、防湿・気密・通気・換気のどれかに不備があれば、見えない場所に湿気が集中する可能性があります。

一方、「高気密だからカビが生える」という説明も正確ではありません。適切な気密施工は、湿った空気が意図しない隙間から壁内へ流れ込むことを防ぐために必要です。

1.SNSで大きく拡散されたカビ・結露の住宅事例

今回確認した投稿の中でも、アイ工務店で建てた「たまお」さんの一連の投稿は、511万回表示されたものを含みます。

単発の写真だけではなく、カビの発見、再発、住宅会社との協議、是正工事、完了後の報告まで時系列で発信されている点が特徴です。

一条工務店については、ロスガードのフィルター周辺に黒い斑点が確認されたInstagram投稿と、ロスガード内部の結露を扱ったYouTube動画を確認しました。

投稿事例確認できる内容技術的な分類
アイ工務店の「たまお」さん床下の広い範囲でカビを確認。再発後、約1年間の協議と是正工事を経て、投稿者は工事停止中の雨養生不足が原因だったと報告建築中の雨濡れ、初期水分、床下カビ
アイ工務店の「むのぼん」さんトイレ、洗面化粧台などの床下合板に広範囲の黒いカビを確認。修繕完了まで継続的に発信床下の初期水分、濡れた合板、大引きのカビ
一条工務店のInstagram投稿入居から約2年で、ロスガードのフィルター周辺にカビのような黒い斑点を確認したと投稿換気設備、フィルター周辺の汚れ・カビ
一条工務店のYouTube動画ロスガード内部に水がたまる結露とカビを紹介。約5,600回再生換気設備内部の結露、排水・温湿度管理
日経クロステックの築10年住宅2階間仕切り壁のクロス、石こうボード裏、柱、間柱に大量のカビ壁体内結露、小屋裏換気・気密の不備

これらをすべて「壁体内結露」として扱うのは正確ではありません。

アイ工務店の事例は床下のカビ、一条工務店の事例は換気設備周辺の結露やカビです。一方、日経クロステックの事例は、壁を開けたことで柱や間柱にもカビが確認された壁体内結露です。

ただし、いずれも「湿気を入れない」「濡れたら乾かす」「湿気の排出経路を確保する」という基本原則は共通しています。

2.アイ工務店の床下カビ事例を時系列で検証

2-1.Aさんの床下カビ事例

2024年6月の施主検査後の投稿では、「構造上問題となる箇所はなかったものの、床下のカビなどがあった」と報告されています。

その後の投稿では、洗面室、ランドリールーム、キッチン、リビング、和室など、床下の広い範囲でカビが確認されたと説明されています。

投稿者によると、建築中に1月間、建物が雨の影響を受けやすい状態になっていた時期があり、木材を十分に乾燥させるか交換するよう求めていたとのことです。

さらに、2024年10月ごろに床下湿度が90%近くなっていることを確認し、床下へ入ったところ、再び複数箇所でカビを発見したとされています。

住宅会社との協議は1年間続き、2025年5月には是正工事を行うことで合意。2026年4月の最終報告では、是正工事が完了し、投稿者は床下でカビが繁殖した原因について「工事が止まっていた期間の雨養生不足だった」と説明しています。

同時に、問題に向き合って是正対応を行ったアイ工務店への感謝も記載されています。

ただし、雨養生不足という原因は、投稿者が最終報告で示した説明です。第三者機関の調査報告書やアイ工務店の公式発表が公開されているわけではないため、全物件に共通する事実として一般化することはできません。

2-2.Bさんの床下カビ事例

2022年11月のX投稿では、床下調査によって木部や合板に広範囲の黒い変色が確認された写真が掲載されています。

住宅会社のカビ問題を広く知られるきっかけの一つになりました。

その後の投稿では、雨水や水分が残った状態でフローリングを施工したことが、カビが広がった原因ではないかという認識が示されています。

2023年2月には、投稿者が住宅会社から説明を受けた内容として、雨天時の上棟を避けることや雨養生を徹底するルールができたと報告しています。プロフィール上では、2023年6月に修繕工事が完了したと記載されています。

一方、写真だけでカビの種類、水分の侵入経路、木材含水率、換気量まで判断することはできません。

3.事例は壁体内結露なのか

結論として、確認できたSNS投稿は、主に「床下のカビ」であり、壁体内結露と同じ現象ではありません。

ただし、日経クロステックが紹介した別の床下カビ事例には、共通する部分があります。

その事例では、建て方前に施工した床合板が雨で濡れ、床下の大引きにカビが発生していました。梅雨時に床合板や基礎内が濡れると、床下通気が確保されていても乾燥しにくくなると指摘されています。

つまり、問題は「木材が雨に濡れたこと」だけではありません。

  • 雨水がどこにたまったのか
  • 排水したのか
  • 木材や合板を十分に乾燥させたのか
  • 含水率を測定したのか
  • 湿った状態で床や断熱材を施工しなかったか
  • 完成後に床下の換気経路が確保されているか

これらを確認せず、湿った木材や合板を閉じ込めることが、カビの発生リスクを高めます。

4.一条工務店のロスガード結露・カビ投稿を検証

4-1.換気設備でも結露する理由換気設備には、屋外の空気と室内の空気が流れ込みます。

高温多湿の外気、冷房された室内、熱交換素子、冷たいダクト表面などの条件が重なると、設備内部やダクト表面が露点温度以下になり、結露する可能性があります。

主な確認項目は次のとおりです。

  • フィルターの目詰まり
  • 熱交換素子の汚れ
  • 結露水の排水経路
  • ドレン配管の詰まりや勾配
  • ダクトの断熱不足
  • 本体周辺の温湿度
  • 給気口と排気口の風量
  • メーカーが指定する清掃・交換頻度

換気設備のカビと壁体内結露は別の現象ですが、換気設備の風量が低下すると、室内湿度が上がり、表面結露や壁体内結露のリスクに影響する可能性があります。

5.10年で初めて壁内に大量のカビが発生した住宅

日経クロステックでは、10年の木造住宅で、2階の間仕切り壁に黒いカビが発生した事例が紹介されています。

壁を開けて調査したところ、表面のクロスだけではなく、石こうボードの裏側、柱、間柱にも大量のカビが付着していました。

被害が2階壁の上部に集中していたため、小屋裏を調査すると、軒先の換気口が遮熱シートによって塞がれていました。小屋裏に入った水蒸気を排出しにくい状態になっていたのです。

この事例で重要なのは、新築直後ではなく、10年目に初めて目に見えるカビが現れた点です。

壁体内では、次のような流れで被害が進行した可能性があります。

  1. 湿った空気が小屋裏や壁内に入る
  2. 換気口が塞がれているため水蒸気を排出できない
  3. 冷房された壁や建材の表面温度が露点温度を下回る
  4. 壁内や石こうボード裏で結露する
  5. 高湿度の状態が繰り返され、木材や内装材にカビが広がる
  6. 室内側のクロスに黒い染みとして現れる

壁の表面に現れたカビは、壁内で進行していた湿害の一部にすぎなかったということです。

6.壁体内結露が起きる5つの原因

6-1.防湿・気密層の切れ

冬は、暖かく湿った室内空気が、コンセント、配管、窓まわり、防湿シートの継ぎ目などから壁内へ入ります。

湿った空気が外気側の冷たい構造用合板などに触れ、露点温度を下回ると結露します。

国総研も、住宅の隙間が多い場合、寒冷地では室内の水蒸気が壁内へ流入し、内部結露を引き起こす可能性があると説明しています。

6-2.通気層や換気口の閉塞

通気層が設計されていても、出口が塞がれていれば湿気は排出できません。

  • 軒先換気口を遮熱シートが塞いでいる
  • 胴縁の配置によって外壁通気が止まっている
  • 窓やバルコニーまわりで通気経路が分断されている
  • 棟換気部材が設置されていない
  • 防火部材が通気経路を塞いでいる

図面上に通気層があることと、実際に空気が通ることは別です。

6-3.断熱材の隙間と熱橋

断熱材の隙間、つぶれ、ずれ、厚さ不足があると、その場所だけ温度が低下します。

柱、梁、金物、筋交い、窓まわり、配管貫通部なども熱橋になりやすい部分です。

UA値は外皮全体の平均的な断熱性能であり、局所的な断熱欠損までは示しません。

6-4.夏型結露

夏は、屋外の高温多湿な空気が壁内へ入り、冷房で冷やされた室内側の建材に触れることで結露します。

例えば、外気温32℃、相対湿度70%の場合、露点温度は26です。壁内へ入った外気が26未満の面に触れれば、夏でも水滴が発生する可能性があります。

日経クロステックが紹介した1年の住宅では、夏に冷房していた部屋の壁にカビが発生しました。石こうボードの張り替えと換気扇の増設を行っても、翌年に再発しています。

原因を特定せず、換気扇を追加するだけでは解決しない場合があることを示す事例です。

6-5.建築中の水分を閉じ込める

木材や床合板が雨で濡れても、適切に排水し、十分に乾燥させれば、直ちに欠陥住宅になるわけではありません。

問題になるのは、濡れた状態で床材、断熱材、防湿シート、内装材を施工し、水分の逃げ道をなくすことです。

床下カビと壁体内結露は発生場所が異なりますが、「湿った材料を閉じ込める」という点では共通しています。

7.高断熱・高気密住宅で重要な考え方

7-1.高気密だからカビが発生するわけではない

高気密住宅は湿気が逃げないからカビが生えると説明されることがありますが、適切ではありません。

気密施工の目的の一つは、湿った空気が壁内へ勝手に流れ込むのを防ぐことです。そのうえで、換気設備を使って設計された経路から空気を入れ替えます。

問題になるのは、次のような組み合わせです。

  • 気密性が低く、壁内へ漏気している
  • 気密性は高いが、換気量が不足している
  • 給排気口やフィルターが詰まっている
  • 加湿器や室内干しで水蒸気が過剰になっている
  • 床下、小屋裏、壁内の排湿経路が塞がれている

7-2.C値だけでは壁体内結露を防げない

C値は、住宅全体の隙間面積を延べ床面積で割った数値です。

数値が小さいほど住宅全体の気密性は高くなりますが、どこに隙間が集中しているかまでは分かりません。

例えば、玄関や窓の隙間と、小屋裏や壁内へつながる隙間では、結露への影響が異なります。

気密測定では、数値だけでなく、測定中に漏気箇所を探し、補修したかまで確認することが重要です。

7-3.断熱材の商品名より壁全体を見る

グラスウール、吹付ウレタン、セルロースファイバー、フェノールフォームなど、どの断熱材にも適切な施工方法があります。

特定の断熱材を選べば、壁体内結露が起きなくなるわけではありません。

確認すべきなのは、室内側から外側までの構成です。

  1. 内装材
  2. 防湿・気密層
  3. 断熱材
  4. 構造用面材
  5. 透湿防水層
  6. 通気層
  7. 外壁材

湿気をどこで止め、入ってしまった湿気をどちら側へ乾かすのかを、建築地の気候と冷暖房方法に合わせて考える必要があります。

8.住宅会社へ確認したいカビ・結露対策

確認項目住宅会社へ聞く内容
雨養生上棟日が雨の場合の延期基準と養生方法はありますか
木材の乾燥濡れた木材や合板の含水率を測定しますか
床下基礎内に入った雨水とコンクリートの初期水分をどう排出しますか
防湿層コンセント、配管、窓、梁まわりをどう連続させますか
通気層外壁、軒、棟の通気入口と出口を現場で検査しますか
結露計算建築地の気候で冬型・夏型結露を検討していますか
気密測定目標C値、測定時期、未達時の補修基準はありますか
換気設備完成後に各給排気口の実風量を測定しますか
設備の結露換気本体、ダクト、配管の断熱・排水方法はどうなっていますか
点検性床下、小屋裏、換気設備を完成後に確認できますか
不具合対応カビが出た場合、原因調査と再発防止まで対応しますか

「断熱等級6だから大丈夫」「高気密高断熱だから結露しない」という回答だけでは不十分です。

図面、施工方法、測定結果、写真、検査記録によって確認しましょう。

9.新築住宅でカビを発見したときの対応

新築住宅でカビや染みを発見した場合は、表面を拭いたり、クロスを張り替えたりする前に記録を残します。

  • 発見場所を広角と接写で撮影する
  • 発見日時と天候を記録する
  • 室温と相対湿度を記録する
  • 冷暖房、加湿器、24時間換気の運転状況を記録する
  • 施工会社へメールなど記録が残る方法で連絡する
  • 雨漏り、配管漏水、表面結露、壁体内結露を切り分ける
  • 木材含水率や換気風量を測定する
  • 必要に応じて第三者の住宅検査を依頼する
  • 原因が分かる前に内装だけを交換しない

カビを除去しても、水分の発生源が残っていれば再発します。

「カビが見えなくなったか」ではなく、「なぜ湿ったのか」「今後も同じ条件が起こるのか」まで確認することが重要です。

まとめ

アイ工務店の床下カビ事例では、複数の施主が写真とともに問題を発信し、住宅会社との協議や是正工事まで時系列で報告しています。

一条工務店の事例では、ロスガードのフィルター周辺や設備内部の結露・カビが投稿されています。

ただし、これらは同じ現象ではありません。

  • アイ工務店の投稿は主に床下のカビ
  • 一条工務店の投稿は主に換気設備周辺の結露・カビ
  • 日経クロステックの事例は壁内や小屋裏で発生した内部結露

共通しているのは、住宅を長持ちさせるためには、断熱性能だけでなく、気密、防湿、通気、換気、雨養生、乾燥確認を一体で考える必要があるということです。

SNSでメーカー名を検索するだけでなく、自分が建てる地域、商品、壁構成、施工体制について、具体的な確認を行いましょう。

この記事の監修

マイホームヒーローズ代表 潟沼勇気
宅地建物取引士・FP2級・住宅ローンアドバイザー

出典・引用元

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