木造住宅会社の倒産が増えています。帝国データバンクによると、2026年17月に判明した木造建築工事業の倒産は159件に達し、同期間として過去10年で最多となりました。

注文住宅は、契約から引き渡しまでに多額の代金を支払います。住宅会社が工事途中で事業を継続できなくなると、工事の停止、追加費用、完成時期の遅れ、前払金を回収できないリスクが生じます。

ただし、この統計だけを見て「地域工務店は危険」「大手なら絶対に安全」と判断するのも適切ではありません。本記事では、最新の倒産動向と増加理由を整理したうえで、会社の規模や知名度だけに頼らず、契約前に確認すべきポイントを具体的に解説します。

この記事の結論

  • 2026年17月の木造建築工事業の倒産は159件で、前年同期比20.5%増、過去10年で最多ペース
  • 背景には、住宅需要の縮小、資材・人件費の上昇、価格転嫁の遅れ、人手不足、工期の長期化が重なっている
  • 倒産件数は「負債1,000万円以上・法的整理」の集計であり、すべての住宅会社の倒産確率を示す数字ではない
  • 住宅瑕疵担保責任保険は完成前の工事継続を原則として保証する制度ではなく、住宅完成保証制度とは役割が異なる
  • 施主は、直近の業績、支払条件、完成保証の有無、工期、下請会社への支払い状況などを契約前に確認する必要がある
  • 安さだけで住宅会社を決めず、見積りの妥当性と会社の継続性を同じ重要度で比較することが大切

1.木造住宅会社の倒産が過去10年で最多ペース

1-1.2026年17月の倒産は159件

帝国データバンクが2026年8月10日に公表した調査によると、2026年17月に判明した木造建築工事業の倒産は159件でした。前年同期の132件から27件増え、増加率は20.5%です。

7月間の累計としては過去10年で最多となり、2012年の166件以来の高水準です。現在のペースが続いた場合、帝国データバンクは2026年通年で270件に達する可能性を示しています。

比較項目2026年1〜7月の状況
倒産件数159件
前年同期132件
前年同期比20.5%増
負債総額約295億8,400万円
負債1億円未満102件、全体の64.2%
集計対象負債1,000万円以上、法的整理による倒産

負債1億円未満の事業者が全体の64.2%を占めており、小規模事業者を中心に厳しい経営環境が続いています。一方、負債10億円を超える事例も4件あり、一定の知名度や長い業歴がある会社でも経営リスクを無視できません。

1-2.東京商工リサーチの上半期集計でも9割増

東京商工リサーチの別集計では、2026年上半期の木造建築工事業の倒産は118件で、前年同期比87.3%増でした。上半期に100件を超えたのは2013年以来13年ぶりです。

原因別では、販売不振が85件で72.0%、赤字累積など過去からの業績悪化が20件で16.9%を占めました。

急激な資材高だけで突然倒産するというより、以前から低収益や赤字が続いていた会社に、受注減少やコスト上昇が重なったケースが多いと読み取れます。

1-3.倒産と休廃業・解散は別の数字

ニュースを見る際は、「倒産」と「休廃業・解散」を分けて考える必要があります。

帝国データバンクの建設業全体の調査では、2026年上半期の倒産は1,043件、休廃業・解散は4,894件で、合計5,937件でした。このうち木造建築工事の倒産・廃業は947件です。

休廃業には、債務超過で破綻した会社だけでなく、後継者不在や経営者の高齢化などを理由に、支払い能力を残したまま事業を終了するケースも含まれます。「947社すべてが倒産した」という意味ではありません。

2.なぜ木造住宅会社の倒産が増えているのか

2-1.新築住宅市場が縮小している

国土交通省によると、2025年の新設住宅着工戸数は74667戸で、前年比6.5%減となりました。3年連続の減少です。

注文住宅に近い「持家」は201,285戸で、前年比7.7%減、4年連続の減少でした。2025年の木造住宅の着工戸数も433,974戸で、前年比4.0%減っています。

2026年7月単月では新設住宅着工が前年同月比8.2%増となりましたが、単月の反発だけで中長期的な市場縮小が解消したとは判断できません。

人口・世帯構造の変化に加え、住宅価格と住宅ローン金利の上昇により、建築時期を先送りする世帯も増えやすい環境です。

2-2.建築資材と設備の仕入価格が上がっている

木材だけでなく、断熱材、塗料、接着剤、配管、住宅設備など幅広い資材の価格が上昇しています。

住宅会社が過去の原価を前提に見積りを出した後、着工までに仕入価格が上がると、契約金額と実際の工事原価に差が生まれます。価格転嫁できなければ、受注が増えるほど資金が減る「低採算受注」になりかねません。

2-3.職人不足で人件費と外注費が上昇している

大工や基礎、屋根、外壁、電気、設備など、住宅工事は多くの専門業者によって成り立っています。職人不足が進むと、外注単価が上がるだけでなく、予定日に職人を確保できず工期が延びる可能性も高まります。

工期が延びれば、現場管理費、仮設費、資材保管費なども増加します。引き渡しと最終入金が遅れるため、手元資金が少ない会社ほど資金繰りへの影響が大きくなります。

2-4.2025年4月の法改正で実務負担が増えた

2025年4月から、原則すべての新築住宅にエネ基準への適合が義務付けられました。また、いわゆる4号特例の対象が縮小され、2階建て木造住宅などでは建築確認時に構造関係規定等の図書提出が必要になりました。

制度の目的は住宅のエネ性能や安全性を確認することであり、法改正自体が倒産を起こすわけではありません。

しかし、設計者や申請担当者が不足している会社では、書類作成、審査対応、着工準備にかかる時間が増え、受注から売上計上までの期間が長くなる要因になります。

2-5.値上げすると受注が減り、据え置くと利益が減る

住宅会社は、原価上昇分を販売価格へ転嫁しなければ利益を確保できません。一方で、住宅価格を上げると、予算を超えた顧客が競合会社や中古住宅へ流れる可能性があります。

その結果、次の悪循環に陥る会社が出てきます。

  1. 受注を確保するために値引きする
  2. 原価上昇で粗利益が減る
  3. 手元資金を確保するため、次の顧客の契約金や着工金への依存が強まる
  4. 受注減少や工期遅延が起きると資金繰りが悪化する
  5. 下請代金や仕入代金の支払いが遅れ、現場が止まりやすくなる

契約棟数の多さだけでは、会社の健全性は判断できません。売上が伸びていても、1棟当たりの利益と手元資金が不足していれば経営は不安定になります。

3.住宅会社が倒産すると施主に何が起こるのか

3-1.契約前なら別会社を探す必要がある

正式な工事請負契約や金銭の支払い前であれば、直接的な金銭被害は限定されます。

ただし、設計や土地購入をその会社の提案前提で進めていると、間取り、資金計画、着工時期を見直す必要があります。

土地の決済期限や住宅ローンの条件が決まっている場合は、建築会社の変更によってスケジュールが間に合わなくなる可能性もあります。

3-2.契約後・着工前は前払金が問題になる

契約金や着工金を支払った後に倒産すると、未施工分の返金を受けられない場合があります。施主は一般債権者として手続きに参加することになりますが、支払った金額が全額戻るとは限りません。

設計図書の利用権、建築確認申請の名義、土地の地盤調査データなどを次の施工会社へ引き継げるかも確認が必要です。

3-3.工事中は追加費用と工期遅延が発生しやすい

工事途中で倒産した場合、別の住宅会社へ工事を引き継ぐ必要があります。しかし、引継会社は、既施工部分の品質や責任範囲を確認しなければなりません。

現場調査、図面の再確認、補修、資材の再発注、仮設工事の延長などにより、当初契約より費用が増える可能性があります。

元の会社へ支払った金額が工事の出来高を上回っていれば、二重に近い負担が生じるおそれもあります。

3-4.引き渡し後も点検や保証に影響する

引き渡し後に住宅会社が倒産すると、定期点検や独自の長期保証、無償メンテナンスを受けられなくなる可能性があります。

一方、住宅瑕疵担保責任保険付き住宅で、構造耐力上主要な部分や雨水の浸入を防止する部分に対象となる瑕疵がある場合、住宅会社が倒産して補修できなければ、住宅取得者が保険法人へ直接保険金を請求できる場合があります。

設備機器はメーカー保証を利用できる可能性があるため、保証書を保管しておきましょう。

4.住宅完成保証制度と住宅瑕疵担保責任保険の違い

この2つは名称が似ていますが、守る対象とタイミングが異なります。

比較項目住宅完成保証制度住宅瑕疵担保責任保険
主な目的施工会社が倒産した場合の住宅完成を支援引き渡し後に対象となる瑕疵の補修費用を確保
主な対象時期契約後から工事完成まで原則として住宅の引き渡し後
工事途中の倒産増加工事費や前払金損失の一部保証、引継業者のあっせん等を受けられる場合がある原則として未完成工事の続行費用には使えない
加入任意。登録事業者が住宅ごとに手続き新築住宅の供給事業者には供託または保険加入による資力確保が義務付けられている
注意点保証限度額、免責、適用開始時期は制度や約款で異なる内装、設備、独自保証などすべての不具合を補償するものではない

「完成保証に対応しています」という説明だけで安心せず、自分の建築工事が実際に保証対象として申し込まれているか、保証書がいつ発行されるか、保証限度額はいくらかを書面で確認してください。

5.契約前に確認すべき住宅会社の7項目

5-1.直近3期の売上・利益・純資産

可能であれば、直近3期分の決算書や信用調査情報を確認します。

単年度の赤字だけで危険と断定することはできませんが、次の状態が重なっていないかを見ることが重要です。

  • 売上が数年連続で大幅に減っている
  • 営業赤字や最終赤字が続いている
  • 純資産が減り続けている、または債務超過である
  • 売上規模に対して現預金が少ない
  • 短期借入金や未払金が急増している

非上場会社では決算書を一般公開していないこともあります。

建設業許可業者の場合、許可行政庁で許可申請書や財務諸表等を閲覧できる場合があるため、都道府県または地方整備局の案内を確認しましょう。

ただし、決算書を見ただけで将来の倒産を完全に予測することはできません。

5-2.建設業許可と更新状況

建設業許可番号、許可業種、有効期限、行政処分歴を確認します。国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」や許可行政庁の窓口で調べられます。

ただし、建設業許可は経営の安全を保証する認定ではありません。

また、一定の軽微な工事のみを請け負う場合は許可が不要なケースもあるため、「許可がない=違法」とは限りません。

5-3.住宅完成保証制度の利用可否

完成保証を利用できる会社かを確認します。

さらに、口頭説明ではなく、今回の契約で保証を付けること、保証料、保証範囲、保証限度額、保証開始時期を約款と申込書で確認してください。

保証会社の審査を通過していることは一つの参考になりますが、それだけで倒産しないことを保証するものではありません。

5-4.支払い条件と工事の出来高

契約時に請負代金の大部分を支払う条件は、施主側のリスクが高くなります。

支払いは、契約、着工、上棟、完成・引き渡しなどの節目に分け、実際の工事進捗と大きく逆転しない条件にします。

特に、着工前や基礎工事の段階で過度な入金を求められた場合は、その理由と保全方法を確認してください。値引きの条件として早期の全額入金を求められても、安易に応じないことが大切です。

5-5.着工棟数に対する現場監督・職人の体制

受注棟数だけでなく、現場監督1人当たりの担当棟数、標準工期、現在の着工待ち期間、主要な協力会社との取引年数を質問します。

急拡大している会社では、売上が伸びていても現場管理や資金管理が追いつかない場合があります。

逆に、小規模でも受注を適正に制限し、協力会社と長期的な関係を築いている会社はあります。

5-6.見積りの価格と利益確保の妥当性

他社より極端に安い見積りは、企業努力による場合もありますが、必要工事の未計上、仕様差、過度な値引きの可能性も確認すべきです。

本体工事だけで比較せず、付帯工事、地盤改良、屋外給排水、空調、照明、カーテン、外構、設計・申請費、諸費用まで同条件で比較してください。

値引き後の金額だけでなく、何が削られたのかも確認します。

5-7.保証・図面・工事記録の引継ぎ方法

万一に備え、工事請負契約書、設計図、構造図、仕様書、見積書、確認済証、検査済証、地盤調査報告書、施工写真、設備保証書を施主側でも保管します。

クラウド上でのみ共有されている場合は、定期的にダウンロードしてください。会社と連絡が取れなくなってから資料を集めるのは困難です。

6.危険を減らす契約と支払いの進め方

住宅会社の経営状況を完全に見抜くことはできません。そのため、会社選びと同時に、倒産が起きても損失を広げにくい契約にすることが重要です。

  • 工事請負契約を締結する前に契約約款まで読む
  • 契約解除、工期遅延、追加変更、違約金の条項を確認する
  • 支払いが工事の出来高を大きく先行しないようにする
  • 完成保証を利用する場合は、住宅ごとの保証手続きを確認する
  • 瑕疵保険の申込先と付保証明書の交付時期を確認する
  • 契約図書と打ち合わせ記録を施主側でも保存する
  • 追加工事は口頭で決めず、金額と工期を書面に残す
  • 住宅ローンのつなぎ融資実行日と工事進捗を照合する

営業担当者の説明だけでなく、契約担当者、設計者、工事担当者にも確認し、回答を書面またはメールで残しましょう。

7.契約後に注意したい経営悪化のサイン

次の変化が一つあるだけで倒産を断定することはできません。しかし、複数が同時に発生した場合は、事実確認を急ぐ必要があります。

  • 担当者の退職や変更が短期間に続く
  • 会社や担当者と連絡が取りにくくなる
  • 着工や資材納入が理由不明のまま延期される
  • 協力会社や職人が現場へ来なくなる
  • 工事進捗より早い入金や支払日の前倒しを強く求められる
  • 大幅な値引きと引き換えに即日契約や一括入金を求められる
  • 追加工事の見積書や領収書の発行が遅れる
  • 現場で資材の引き揚げや工事中断が起きる

不安を感じたら、憶測をSNSへ投稿する前に、工事進捗、支払い済み金額、契約内容、保証加入状況を整理してください。必要に応じて、住宅専門の相談窓口や弁護士へ早めに相談します。

8.住宅会社が倒産・音信不通になった場合の初動

8-1.追加送金を止めて事実関係を確認する

担当者と連絡が取れないだけで倒産とは限りません。会社の代表電話、本社、工事責任者、保証会社へ連絡し、裁判所の公告や信用調査会社の情報も確認します。

工事の進捗を確認できない状態で、追加の支払いを急がないでください。

一方的な契約解除や現場からの資材搬出も、権利関係に影響する可能性があるため、専門家へ相談してから進めます。

8-2.契約書と工事資料を確保する

次の資料をまとめ、現場を日付入りの写真や動画で記録します。

  • 工事請負契約書と契約約款
  • 見積書、設計図、仕様書、工程表
  • 支払記録、請求書、領収書
  • 変更契約書と打ち合わせ記録
  • 建築確認関係書類
  • 地盤調査、構造計算、施工写真
  • 完成保証、瑕疵保険、設備保証の書類

8-3.保証会社と専門窓口へ連絡する

住宅完成保証へ加入している場合は、保証会社へ事故報告と今後の手続きを確認します。

加入していない場合や契約関係が複雑な場合は、国土交通大臣指定の相談窓口である「住まいるダイヤル」や弁護士へ相談してください。

破産管財人が選任されている場合、元の請負契約の扱いや現場の資材の所有関係を確認しないまま、別会社と工事を再開すると問題が生じる可能性があります。

新しい施工会社と契約する前に、既施工部分の出来高と品質を第三者に確認してもらうことも重要です。

9.中小工務店は危険で大手ハウスメーカーなら安心なのか

結論として、会社規模だけで安全性を決めることはできません。

大手ハウスメーカーは、一般に資金調達力、仕入交渉力、施工体制、情報開示の面で優位性があります。

一方、地域工務店には、固定費を抑えやすい、地域の職人との関係が強い、受注量を管理しやすいといった会社もあります。

重要なのは、次の3つを分けて評価することです。

評価軸確認内容
建てる力設計力、施工品質、現場管理、性能、アフター体制
続ける力収益性、財務、受注と人員のバランス、後継者、協力会社との関係
守る仕組み完成保証、瑕疵保険、支払条件、契約書、記録の保管

コミ、SNSの評判、展示場の印象だけでは、会社の財務状況や契約上の保護までは分かりません。

反対に、倒産件数の増加だけを理由に、健全な地域工務店を候補から外す必要もありません。

10.これからの住宅会社選びで重視すべきこと

住宅会社の比較では、坪単価、断熱性能、耐震性能、間取り、デザインに目が向きがちです。

しかし、契約した住宅を予定どおり完成させ、引き渡し後も点検や保証を続けられる経営基盤も、住宅性能と同じくらい重要です。

候補会社を3社程度に絞ったら、同じ建物条件で見積りを比較し、次の順番で確認しましょう。

  1. 総予算内に収まるか
  2. 希望する性能と仕様を満たすか
  3. 見積りに必要工事が含まれているか
  4. 工期と施工体制に無理がないか
  5. 会社の業績と財務に継続的な問題がないか
  6. 完成保証と瑕疵保険の内容が明確か
  7. 支払条件が工事進捗に対して先行しすぎていないか

「今月契約すれば大幅に安くなる」と急かされた場合ほど、即決せず、値引きの理由と契約条件を確認してください。

数十万円の値引きより、未完成や追加負担を避ける方が家計への影響ははるかに大きくなります。

まとめ

2026年17月の木造建築工事業の倒産は159件となり、過去10年で最多ペースです。

住宅着工の減少、資材価格と人件費の上昇、職人不足、法改正後の実務負担、価格転嫁の難しさが同時に進み、特に低収益や資金余力の乏しい会社へ影響が表れています。

ただし、倒産件数の増加は、特定の住宅会社が倒産することを予測する情報ではありません。大手か地域工務店かという二択でもなく、財務、施工体制、保証、支払条件を個別に確認することが重要です。

これから注文住宅を建てる方は、次の3点を優先してください。

  • 候補会社の直近の業績と施工体制を確認する
  • 住宅完成保証と住宅瑕疵担保責任保険を混同しない
  • 支払いが実際の工事進捗を大きく先行しない契約にする

住宅会社の経営状態を完全に予測することはできません。だからこそ、会社を見極める確認と、万一の損失を抑える契約上の備えを両方行う必要があります。

この記事の監修

マイホームヒーローズ代表 潟沼勇気
宅地建物取引士・FP2級・住宅ローンアドバイザー

出典・引用元

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