2026年7月28日に発生した令和8年熊本地震では、熊本県宇城市と氷川町で最大震度7を観測しました。

SNSでは、4年の住宅に壁のひび割れや粉の落下、家財の散乱が生じた投稿が、一条工務店の住宅として拡散されています。

一条工務店は全棟で耐震等級3を標準としているため、「耐震等級3でもこれほど被害が出るのか」「一条工務店の耐震性能に問題があったのか」と不安を感じた方もいるでしょう。

しかし、公開された室内写真だけでは、壁紙や石膏ボードなどの内装被害と、柱、梁、基礎、耐力壁などの構造被害を区別できません。

この記事では、SNSから確認できる事実と確認できないことを分けたうえで、耐震等級3でも内装被害が起こる理由、一条工務店の耐震性能、2倍耐震、制震、地震保険、地震に本当に強い家の選び方を解説します。

この記事の結論

今回のSNS投稿だけを根拠に、一条工務店の住宅に重大な構造被害や施工不良があったと判断することはできません。

  • 令和8年熊本地震はマグニチュード7.1、最大震度7を観測した非常に強い地震
  • SNSの写真から確認できるのは、主に室内壁のひび割れ、粉の落下、家財の散乱
  • 壁紙や石膏ボードのひび割れと、基礎や耐力壁などの構造被害は分けて考える必要がある
  • 耐震等級3は倒壊や崩壊を防ぐための構造性能であり、内装や家具まで無傷にする制度ではない
  • 一条工務店は全棟で耐震等級3と許容応力度計算を採用し、一部商品では2倍耐震を選択できる
  • 地震後も住み続けられる家を目指すなら、耐震だけでなく制震、家具固定、設備、点検体制まで確認したい
  • 一つの住宅の写真だけで、ハウスメーカー全体の耐震性能を評価することはできない

大切なのは「ひびが入ったから耐震性能が低い」「倒壊しなかったから完全に安全」と単純化せず、専門家による現地調査で被害の層を分けて確認することです。

1.令和8年熊本地震の概要

1-1.熊本県宇城市と氷川町で最大震度7を観測

気象庁の発表によると、2026年7月28日1627分ごろ、熊本県熊本地方を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生しました。

項目内容
発生日時2026年7月28日16時27分ごろ
震源熊本県熊本地方
震源の深さ16km
マグニチュード7.1の暫定値
最大震度震度7
震度7の観測地点熊本県宇城市、氷川町
長周期地震動熊本県熊本地方で階級4

気象庁は、この地震とその後に発生した一連の地震活動を「令和8年熊本地震」と命名しています。

1-2.最初の震度7の後も活発な地震活動が続いた

最初の震度7だけで地震活動が終わったわけではありません。

2026年8月2日13時時点では、震度1以上を観測した地震が360回発生していました。

最大震度発生回数
震度71回
震度5弱5回
震度416回
震度343回
震度2101回
震度1194回
合計360回

地震回数は速報値であり、後日の調査によって変更される可能性があります。

住宅への影響を考えるときは、一度の大きな揺れだけでなく、その後に繰り返した地震も考慮する必要があります。

1-3.倒壊しなくても住み続けられないことがある

地震に強い家を考えるとき、多くの人が最初に確認するのは倒壊の有無です。

しかし、住宅が倒壊しなかったとしても、次のような問題によって生活を続けられないことがあります。

  • 建物が傾いている
  • ドアや窓を開閉できない
  • 壁や天井材が落下している
  • 水道や排水管が破損している
  • ガスや電気設備に異常がある
  • 太陽光発電や蓄電池が故障している
  • 家具や家電が転倒している
  • 道路被害によって住宅へ近づけない
  • 停電や断水が長期化している
  • 余震による二次被害の危険がある

地震後の生活継続性を考えるには、構造躯体だけでなく、内装、設備、家具、ライフライン、アフターサポートまで確認する必要があります。

2.震度7では住宅にどのような影響が出るのか

2-1.耐震性の高い住宅にもひび割れが生じることがある

気象庁の震度階級関連解説表では、震度7になると、耐震性の高い木造建物でも壁などのひび割れや亀裂が多くなり、まれに傾くことがあると説明されています。

固定されていない家具についても、ほとんどが移動または転倒し、飛ぶことがあるとされています。

耐震性能の高い住宅でも、次のような影響が生じる可能性があります。

  • 壁紙や石膏ボードのひび割れ
  • 天井と壁の取り合い部分の隙間
  • ドアや窓の開閉不良
  • 外壁材やタイルの割れ
  • 家具や家電の移動・転倒
  • 収納扉が開いて中身が落下
  • 配管や住宅設備の故障
  • 太陽光発電や蓄電池の異常
  • 基礎や外構のひび割れ
  • 地盤沈下や擁壁の変形

耐震性能が高いことと、住宅のすべての部分が無傷であることは同じではありません。

2-2.住宅被害は5つの層に分けて考える

地震後の住宅は、構造躯体だけでなく、内装、設備、家財まで含めて確認する必要があります。

被害の層主な確認箇所写真だけで判断できる範囲
構造躯体基礎、柱、梁、耐力壁、構造用面材、接合金物室内写真だけでは判断が難しい
内装下地石膏ボード、下地材、ビス、パテひびの位置や形から推測できる場合がある
仕上げ材壁紙、巾木、見切り材、タイル表面の割れや剥がれを確認できる
建具・設備ドア、窓、配管、給湯器、太陽光発電開閉や作動確認が必要
家具・家財家具、家電、食器、収納物転倒や散乱を目視できる

壁にひびがあるからといって、直ちに柱や梁が壊れているとは限りません。

反対に、表面のひびが小さくても、基礎、地盤、床下、接合部などに影響が生じている可能性はあります。

3.熊本地震で一条工務店の住宅が話題になった理由

3-1.4年住宅の室内状況が投稿された

令和8年熊本地震の後、Threadsに4年の住宅の被害状況が投稿されました。

投稿では、震度7の揺れを受けた後の住宅について、次のような不安が伝えられています。

  • 家の中が散乱している
  • 室内の壁にひび割れがある
  • 壁から粉が落ちている
  • 修理できるか分からない
  • 地震保険の対象になるか不安
  • 次の大きな地震に耐えられるか心配

公開された写真では、室内壁の線状のひび割れや、家財が散乱している状況を確認できます。

その後、Xでは一条工務店で建てられた4年の住宅として紹介され、一条工務店の耐震性能に関する議論へ発展しました。

ただし、住宅会社、商品、構造仕様などを契約書や図面で確認できる資料は公開されていません。本記事では、SNS上で公開された範囲と、一条工務店の公式情報を分けて検証します。

3-2.転載時の「被害甚大」という表現が拡散した

元の投稿は、被災した居住者による修理や地震保険についての相談でした。

その後、Xで「築4年でも被害甚大」という趣旨の見出しが付けられて転載され、一条工務店の耐震性能をめぐる投稿として拡散しました。

しかし、家の中が散乱しているという生活者の印象と、構造躯体へ重大な損傷が生じたことを示す表現は、同じ意味ではありません。

次の被害は分けて評価する必要があります。

  • 家財の散乱
  • 壁紙のひび割れ
  • 石膏ボードの損傷
  • 建具の変形
  • 設備の故障
  • 耐力壁や構造用面材の損傷
  • 柱や梁の接合部の損傷
  • 基礎や地盤の変形

室内写真だけを見て、被害の程度や住宅の安全性を断定することはできません。

3-3.現時点で確認できることと確認できないこと

確認できること確認できないこと
築4年の住宅であるとの投稿契約書や図面に記載された住宅会社と商品名
室内壁に線状のひび割れがある壁紙だけの損傷か石膏ボードまで割れているか
壁付近に粉が落ちている耐力壁や構造用面材への影響
家具や収納物が散乱している基礎、柱、梁、接合部の状態
投稿者が修理や地震保険に不安を感じている建物全体の傾きや残留変形
Xでは一条工務店の住宅として紹介された施工不良や設計上の問題の有無
地震によって住宅へ影響が生じた一条工務店や第三者による点検結果

一条工務店による個別住宅の点検結果、保険会社による損害調査、第三者の建築士による現地調査は公表されていません。

構造躯体の損傷や施工不良を断定することも、構造体が完全に無傷だったと断定することもできない段階です。

4.投稿写真から考えられる住宅への影響

4-1.壁紙や石膏ボード周辺のひび割れ

公開された写真では、壁の一部に縦方向または継ぎ目に沿ったようなひび割れが見られます。

地震で建物が一時的に変形すると、石膏ボードの継ぎ目、パテ処理部分、壁と天井の取り合い、ドアや窓の角などに力が集中することがあります。

その結果として、次のような症状が現れる可能性があります。

  • 壁紙の継ぎ目が開く
  • 壁紙が線状に切れる
  • 石膏ボードの継ぎ目が割れる
  • パテや石膏の粉が落ちる
  • 巾木や見切り材に隙間ができる
  • ビス周辺が浮く
  • 開口部の角から斜めにひびが入る

このような損傷は、構造躯体の損傷を直接示すものではありません。

ただし、ひびの幅、方向、位置、長さ、進行状況によっては、壁の内部まで詳しく点検する必要があります。

4-2.家具や収納物の移動・散乱

室内の被害が大きく見える理由には、家具や収納物の移動も関係しています。

震度7では、固定されていない家具のほとんどが移動または転倒し、収納物が飛び出すことがあります。

耐震等級は主に建物の構造躯体を評価する制度であり、次のものまで無傷にする性能を示すものではありません。

  • 食器
  • 家電
  • 本棚
  • 収納物
  • 子どもの玩具
  • テレビ
  • 冷蔵庫
  • 置き家具
  • 吊り下げ照明
  • 壁掛けの装飾品

耐震等級3の住宅でも、家具固定や収納扉の対策が不足していれば、室内には大きな被害が出る可能性があります。

4-3.繰り返す地震による内装への影響

令和8年熊本地震では、最初の震度7の後も震度5弱を含む地震が繰り返し発生しています。

最初の地震で生じた小さなひびが、その後の揺れによって広がることも考えられます。

特に確認したいのは次の部分です。

  • 石膏ボードの継ぎ
  • ビスの周辺
  • ドアや窓の開口部
  • 壁と天井の接合部分
  • 耐力壁の端部
  • 外壁材の接合部分
  • 屋根材の固定部分
  • 太陽光パネルと屋根の固定部分
  • 給排水管の接続部分
  • 基礎の立ち上がり部分

耐震等級3は、震度7が何度繰り返されても無傷であることを保証する回数保証ではありません。

5.一条工務店の耐震性能に問題があったのか

5-1.公開情報だけでは問題があったと判断できない

今回話題になった住宅については、次の情報が公表されていません。

  • 一条工務店の商品名
  • 建築時に採用した構造仕様
  • 2倍耐震の採用有無
  • 設計住宅性能評価書
  • 建設住宅性能評価書
  • 構造計算書
  • 敷地で実際に受けた地震動
  • 地盤調査と基礎の内容
  • 建物の形状と耐力壁の配置
  • 一条工務店による点検結果
  • 保険会社による損害認定
  • 第三者の建築士による調査結果

壁のひび割れや室内の散乱だけを根拠に、一条工務店の耐震性能に問題があったとは判断できません。

一方で、耐震等級3の住宅であっても、地震後に構造躯体を点検する必要がないということではありません。

5-2.構造躯体が安全性を維持した可能性もある

今後の点検で次の状態が確認された場合は、内装への影響が出た一方で、構造躯体が倒壊を防いだ可能性があります。

  • 基礎に重大なひび割れやずれがない
  • 建物全体に大きな傾きがない
  • 耐力壁や構造用面材に重大な損傷がない
  • 柱や梁の接合部に異常がない
  • ドアや窓を正常に開閉できる
  • 外壁や屋根に大きな脱落がない
  • 床に大きな傾斜がない
  • 給排水設備に重大な破損がない

反対に、基礎の大きなひび割れ、建物の傾斜、複数の建具の開閉不良、壁を斜めに横断するひびなどが確認された場合は、構造への影響を詳しく調べる必要があります。

5-3.内装被害があることと耐震性能が機能しなかったことは同じではない

大地震では、構造躯体を守る過程で建物が一定範囲内で変形し、内装材にひび割れが生じることがあります。

そのため、評価は次の順番で行うことが重要です。

  1. 人命を守り、倒壊を防げたか
  2. 構造躯体にどの程度の損傷があるか
  3. 補修によって耐震性能を回復できるか
  4. 内装、設備、建具をどこまで修理する必要があるか
  5. 地震後も安全に居住を継続できるか

壁紙や石膏ボードのひび割れは軽視できませんが、写真だけで住宅全体の耐震性能を評価するのも適切ではありません。

6.一条工務店が公表している耐震性能

6-1.全棟で耐震等級3を標準としている

一条工務店は公式サイトで、すべての商品において耐震等級3を標準仕様としていると説明しています。

また、一般的な壁量計算ではなく、全棟で許容応力度計算を行っているとしています。

一条工務店が公表している主な耐震対策は次のとおりです。

  • 全棟で耐震等級3
  • 全棟で許容応力度計算
  • 壁、床、天井を一体化したツインモノコック構造
  • 着工前の地盤調査
  • 敷地に応じた基礎の選定
  • 高耐久・高耐震基礎
  • 工場生産による品質管理
  • 実物大の住宅を使用した耐震実験
  • 防腐・防蟻処理による構造耐久性への配慮

ただし、公式サイトに掲載されている一般的な性能と、今回投稿された個別住宅の点検結果は分けて考える必要があります。

6-2.耐震等級3と許容応力度計算は別の確認項目

耐震等級3は、住宅性能表示制度における構造躯体の耐震性能の等級です。

一方、許容応力度計算は、柱、梁、耐力壁、床、接合部、基礎などへ加わる力を確認する構造計算の方法です。

比較項目内容
耐震等級3耐震等級1で想定する地震力の1.5倍に対する構造性能
許容応力度計算建物へ加わる力と各部材が耐えられる力を確認する計算
壁量計算必要な耐力壁の量などを確認する比較的簡易な方法
住宅性能評価書第三者の登録住宅性能評価機関が設計や施工を評価する書類

「耐震等級3」と表示されていても、どの計算方法で確認しているか、住宅性能評価書を取得するかは住宅会社によって異なります。

6-3.一部商品では2倍耐震も選択できる

一条工務店は、耐震等級3を超え、建築基準法で想定する地震力の2倍の強さを目指した「2倍耐震」を用意しています。

一条工務店の公式サイトでは、2倍耐震について、構造躯体だけでなく、壁のひび割れや建具のゆがみなど、室内の損傷を抑えることも追求した仕様だと説明しています。

2026年8月3日時点で対応商品として掲載されているのは、次の住宅です。

  • グラン・スマート
  • アイ・スマート
  • アイ・キューブ
  • ナチュリア

ただし、話題になった住宅の商品名や、2倍耐震を採用していたかどうかは確認できません。

通常の耐震等級3と2倍耐震を混同し、今回の住宅にも2倍耐震が採用されていたと考えないよう注意が必要です。

7.耐震等級3でも内装被害が起こる理由

7-1.耐震等級3は無傷を保証する制度ではない

住宅性能表示制度の耐震等級では、主に構造躯体の倒壊防止と損傷防止を評価します。

評価対象耐震等級での考え方
構造躯体の倒壊等防止極めてまれな大地震でも倒壊・崩壊しないことを目指す
構造躯体の損傷防止まれな地震による著しい損傷を防ぐことを目指す
壁紙や内装仕上げ無傷であることを保証しない
家具や家電評価対象に含まれない
配管や住宅設備個別の仕様や固定方法による
地震後の居住継続耐震等級だけでは決まらない

耐震等級3は、耐震等級1で想定する地震力の1.5倍に対して、倒壊・崩壊しない程度の構造性能を示す最高等級です。

しかし、震度7でも壁紙、石膏ボード、家具、設備まで無傷であることを示す制度ではありません。

7-2.2016年熊本地震でも耐震等級3の住宅に軽微な被害があった

2016年の平成28年熊本地震について、国土交通省と建築研究所が実施した調査では、住宅性能表示制度を利用した耐震等級3の木造住宅16棟の状況が確認されています。

被害状況棟数割合
無被害14棟87.5%
軽微または小破2棟12.5%
倒壊0棟0%

この調査からも、耐震等級3は大地震時の被害を抑える効果が期待できる一方で、すべての住宅が完全に無傷になるわけではないことが分かります。

2026年の令和8年熊本地震については、住宅の耐震等級別の詳細な調査結果がまだ公表されていません。

2016年の結果をそのまま今回の地震へ当てはめることはできませんが、耐震性能と住宅被害の関係を考える参考にはなります。

7-3.建物の変形が内装材へ伝わる

地震時には、耐震性の高い住宅でも建物が全く動かないわけではありません。

構造計算上許容される範囲で建物が変形した場合でも、変形への追従性が異なる内装材にはひび割れが生じることがあります。

特に影響が出やすい部分は次のとおりです。

  • 石膏ボード同士の継ぎ
  • 壁と天井の取り合い
  • ドアや窓の四隅
  • 吹き抜け周辺
  • 大開口の周辺
  • 異なる材料が接する部分
  • 下地材の継ぎ
  • ビスや金物の周辺

内装被害を抑えたい場合は、耐震等級だけでなく、建物の変形量、制震装置、内装下地の施工方法まで確認する必要があります。

8.一つの住宅だけで地震への強さを判断できない理由

同じ熊本県内、同じハウスメーカー、同じ耐震等級であっても、住宅への影響は一律ではありません。

地震被害には次の条件が関係します。

  • 断層からの距離
  • 敷地の地盤
  • 盛土や擁壁の状態
  • 液状化や地盤変状
  • 地震動の周期と方向
  • 敷地で実際に生じた加速度
  • 平屋か2階建てか
  • 建物の重量
  • 吹き抜けや大開口の有無
  • 耐力壁の配置
  • 建物形状のバランス
  • 屋根や太陽光パネルの重量
  • 家具の固定状況
  • 施工時期と商品仕様
  • 繰り返し受けた揺れの回数
  • 地震後に行われた応急措置

気象庁が発表する震度は、観測地点で記録された値です。

宇城市や氷川町で震度7が観測されたからといって、市内のすべての住宅が全く同じ揺れを受けたとは限りません。

一つの住宅の写真だけで一条工務店全体の耐震性能を評価することも、別の住宅が無傷だったことを理由に今回の住宅にも問題がないと判断することも適切ではありません。

9.地震後に確認したい住宅の症状

9-1.早急に点検を依頼したい症状

次の症状がある場合は、住宅会社、自治体、建築士などへ相談し、余震の状況にも注意してください。

  • 建物や床が目で見て分かるほど傾いている
  • 基礎を貫通するような大きなひび割れがある
  • 基礎の一部がずれている、欠けている
  • 複数のドアや窓が急に開閉できなくなった
  • 壁に斜め方向やバツ状の大きなひびがある
  • 外壁が浮いている、脱落している
  • 柱や梁に割れ、ずれ、接合部の離れがある
  • 床下や小屋裏で構造用面材が外れている
  • 配管の破損、漏水、ガス臭、焦げ臭さがある
  • 太陽光発電や蓄電池に破損、発熱、異常表示がある
  • 擁壁が傾いている、膨らんでいる
  • 地面に大きな亀裂や段差が生じている

安全を確認できない状態で、床下、小屋裏、屋根などへ入ることは避けましょう。

ガス臭、火花、蓄電池の発熱などがある場合は、住宅の点検よりも避難と関係機関への連絡を優先してください。

9-2.住宅会社へ依頼したい点検内容

  1. 建物全体の傾斜測定
  2. 基礎のひび割れ幅と深さの確認
  3. 地盤と擁壁の変状確認
  4. 外壁と屋根の点検
  5. 床下と小屋裏の確認
  6. 耐力壁と構造用面材の確認
  7. 接合金物のずれや緩みの確認
  8. ドアと窓の開閉確認
  9. 太陽光発電、蓄電池、給湯器の作動確認
  10. 給排水管の漏水確認
  11. 内装被害と構造被害を分けた報告書の作成
  12. 補修範囲と補修費用の見積り
  13. 補修後の耐震性能に関する説明

一条工務店は、令和8年熊本地震で住宅に困りごとがある入居者に対して、24時間受付のコールセンターを案内しています。

9-3.点検が終わるまで記録を残す

被害箇所を片付けたり修理したりする前に、次の記録を残しておきましょう。

  • 建物の外観を四方向から撮影する
  • 各部屋の全体を撮影する
  • ひび割れの位置が分かる引きの写真を撮る
  • ひび割れに定規を当てて撮影する
  • ひびの幅と長さを記録する
  • 同じ場所を日付を変えて撮影する
  • 落下した粉や破片を撮影する
  • 家財の転倒や破損を別に記録する
  • 修理前に保険会社へ連絡する
  • 住宅会社の点検報告書と見積書を保管する

地震保険の損害調査や住宅会社の点検に必要となる可能性があるため、写真は全体と接写の両方を残すことが重要です。

10.地震保険では壁のひび割れも補償されるのか

10-1.修理費がそのまま支払われる制度ではない

地震保険は、実際にかかった修理費をそのまま補償する制度ではありません。

建物の主要構造部に生じた損害などに基づき、全損、大半損、小半損、一部損のいずれかに認定されます。

損害区分主要構造部の損害額
全損建物時価の50%以上
大半損建物時価の40%以上50%未満
小半損建物時価の20%以上40%未満
一部損建物時価の3%以上20%未満

認定された場合に支払われる金額も、実際の修理費ではなく、地震保険金額に対する所定の割合です。

損害区分支払われる保険金
全損地震保険金額の100%
大半損地震保険金額の60%
小半損地震保険金額の30%
一部損地震保険金額の5%

保険金には契約上の上限があり、建物の時価額を超えて支払われるものではありません。

10-2.壁紙だけの損傷では認定されない可能性がある

壁紙などの仕上げ材だけの損傷では、地震保険の一部損に達しない可能性があります。

ただし、木造住宅の損害調査では工法によって着目する部分が異なります。

例えば、枠組壁工法では外壁、内壁、床組、基礎、屋根などの損傷状況から損害割合を算出します。

写真だけで「壁紙だから対象外」「ひびがあるから一部損」と判断せず、加入している保険会社へ連絡してください。

10-3.罹災証明書と地震保険は別の制度

自治体による住家の被害認定と、保険会社による地震保険の損害認定は異なる制度です。

比較項目罹災証明書地震保険
判定する主体市区町村損害保険会社
主な目的公的支援を受けるための被害認定契約に基づく保険金の支払い
主な区分全壊、大規模半壊、中規模半壊、半壊、準半壊など全損、大半損、小半損、一部損
判定基準国の住家被害認定基準地震保険損害認定基準

罹災証明書の判定と、地震保険の認定が同じになるとは限りません。

11.熊本地震から考える地震に強い家の選び方

今回の熊本地震から学ぶべきことは、ハウスメーカー名や耐震等級の数字だけで住宅の安全性を判断しないことです。

住宅会社を比較するときは、次の点まで確認しましょう。

  • 耐震等級3を取得できるか
  • 許容応力度計算で確認しているか
  • 設計住宅性能評価書を取得できるか
  • 建設住宅性能評価書を取得できるか
  • 建物ごとに構造計算書を確認できるか
  • 繰り返す大地震を想定した実験を行っているか
  • 実験した商品と実際に建てる商品の構造が同じか
  • 標準の耐震等級3と追加耐震仕様の違いは何か
  • 大開口や吹き抜けを採用しても耐震性を確保できるか
  • 制震装置を採用できるか
  • 地震後の点検体制が整っているか
  • 内装や外壁の補修は保証対象になるか
  • 太陽光発電や蓄電池の災害時点検に対応しているか
  • 家具や家電を固定できる下地を設置できるか
  • 地盤、擁壁、基礎まで含めて提案してもらえるか
  • 補修部品を長期間供給できるか

地震後も暮らしを続けられる住宅を目指すには、構造躯体だけでなく、内装の補修性、家具固定、設備、地震保険、アフターサポートまで一体で考える必要があります。

12.耐震だけでなく制震も含めて地震に強い家を考える

地震に強い家を建てるには、耐震等級だけでなく、繰り返す揺れによる建物の変形を抑える「制震」も検討する必要があります。

耐震、制震、免震は、地震に対する役割が異なります。

構造・装置主な役割確認したいポイント
耐震柱、梁、耐力壁などで地震の力に耐える耐震等級、構造計算、耐力壁の配置
制震ダンパーなどで地震エネルギーの一部を吸収し、建物の変形を抑える装置の種類、配置、適用条件、実験結果
免震建物と地盤の間に装置を設け、揺れが建物へ伝わりにくくする敷地条件、費用、維持管理、可動範囲

12-1.まず耐震性能を確保し、そのうえで制震を検討する

耐震構造は、建物が地震の力に抵抗するための基本です。

制震装置は耐震性能の代わりになるものではなく、耐震構造へ追加して建物の揺れや変形を抑えるための仕組みです。

基本的には、次の順番で検討するとよいでしょう。

  1. 地盤と擁壁の安全性を確認する
  2. 敷地に合った基礎を設計する
  3. 耐震等級3を確保する
  4. 許容応力度計算で建物ごとの強さを確認する
  5. 制震装置を追加して変形や損傷の軽減を検討する
  6. 家具固定や設備の転倒・脱落対策を行う
  7. 地震後の点検と補修体制を確認する

制震装置だけを追加しても、耐力壁の不足やバランスの悪い間取りを補えるとは限りません。

12-2.繰り返す地震への備えとして制震を検討する

耐震構造は、柱、梁、床、耐力壁などで地震力に抵抗します。

大きな地震が繰り返されると、耐力壁、接合部、構造用面材、内装材などへ負担が蓄積する可能性があります。

制震装置には、地震エネルギーの一部を吸収することで、次のような影響を軽減する効果が期待できます。

  • 耐力壁や接合部へ加わる負担
  • 建物全体の変形
  • 上階の揺れ
  • 壁紙や石膏ボードのひび割れ
  • 建具のゆがみや開閉不良
  • 繰り返す地震による構造部分への負担

ただし、制震装置を付ければ必ず住宅が無傷になるわけではありません。

実際の効果は、建物の構造、重量、間取り、装置の種類、設置数、配置、地震動などによって異なります。

12-3.制震装置は商品名や低減率だけで判断しない

ハウスメーカーによって、制震装置の仕組み、標準仕様かオプションか、設置できる商品や間取りが異なります。

比較するときは、次の点を確認しましょう。

  • 制震装置が標準仕様かオプション
  • 実際に建てる商品へ設置できるか
  • 建物ごとに装置の配置を検討しているか
  • 制震装置を含めて構造計算を行っているか
  • 繰り返す大地震を想定した実験を行っているか
  • 実験した建物と検討中の商品の構造が同じか
  • 公表された揺れの低減率はどの条件で測定したか
  • 装置の耐久性や交換時期が示されているか
  • 地震後に装置を点検できるか
  • 制震装置を設置した状態で耐震等級3を取得できるか
  • 将来の交換や補修にかかる費用はいくらか

カタログに掲載された揺れの低減率は、特定の建物や実験条件で算出されている場合があります。

数値だけを比較せず、実際に建てる住宅の構造や間取りでどのような効果が期待できるのか確認することが大切です。

12-4.地震に本当に強いハウスメーカーは条件によって異なる

地震に強いハウスメーカーを、会社名だけで一律に順位付けすることはできません。

同じ会社でも、選ぶ商品、構造、間取り、追加仕様、建築地の地盤などによって地震への備えは変わります。

住宅会社を比較するときは、次の項目を総合的に確認する必要があります。

  1. 耐震等級3を取得できるか
  2. 許容応力度計算で建物ごとに安全性を確認しているか
  3. 制震装置を採用できるか
  4. 繰り返す地震を想定した実大実験を行っているか
  5. 地盤調査と基礎設計をどのように行うか
  6. 大開口や吹き抜けを設けても耐震性を確保できるか
  7. 構造計算書や住宅性能評価書を確認できるか
  8. 地震後の点検・補修体制が整っているか
  9. 内装、設備、太陽光発電などの災害対応を確認できるか
  10. 予算内で必要な耐震・制震仕様を採用できるか

マイホームヒーローズでは、耐震等級の数字だけでなく、構造計算の方法、制震装置、実大実験、地盤・基礎、間取りの自由度、地震後のサポートまで比較します。

希望地域、建築予算、構造、間取り、必要な性能を整理したうえで、条件に合うハウスメーカーや経験豊富な担当者の紹介も行っています。

「耐震等級3ならどこで建てても同じ」と考えず、実際に建てる商品と間取りを前提に比較することが重要です。

まとめ

2026年7月28日に発生した令和8年熊本地震では、熊本県宇城市と氷川町で最大震度7を観測しました。その後も活発な地震活動が続き、住宅やライフラインなどへ広い範囲で影響が出ています。

SNSでは、4年の住宅に室内壁のひび割れ、粉の落下、家財の散乱が生じた投稿が、一条工務店の住宅として話題になりました。

ただし、公開された写真から分かるのは主に内装と家財の状態です。柱、梁、基礎、耐力壁などの構造躯体に損傷があるかどうかは、現地調査を行わなければ判断できません。

耐震等級3は、壁紙や石膏ボード、家具、設備まで無傷にする制度ではありません。重要なのは、倒壊の有無だけでなく、構造損傷、内装損傷、設備被害、家財被害を分けて確認することです。

一条工務店は、全棟で耐震等級3と許容応力度計算を採用し、一部商品では2倍耐震も用意しています。しかし、今回話題になった住宅の商品や採用仕様は確認できていません。

地震後も住み続けられる家を目指すなら、耐震等級3を基本として、制震装置、地盤と基礎、家具固定、設備、地震保険、地震後の点検体制まで確認しましょう。

この記事の監修

マイホームヒーローズ代表 潟沼勇気
宅地建物取引士・FP2級・住宅ローンアドバイザー

出典・引用元

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